「特別機内食」体験記〜空の上で文化を味わう

※この記事は、2017年〜2019 年の旅行をまとめたものです。早くこれまでのように自由に旅行に行ける日が来ることを祈っています。

 

 皆さんは「特別機内食」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。意味的にはその名の通り"特別な"機内食なのですが、言ってみれば事前登録が必要な食事のことです。

 人の食生活は十人十色です。宗教上の理由で食べられないものがある人、ベジタリアン、アレルギー、健康上の理由で制限する必要がある人など色々な制約、嗜好がありますよね。そして、そのような人も安心して旅行し、フライトを楽しめるよう、どの航空会社も多様なメニューを用意しています。

 特別機内食は、事前に注文しておくことが必要となります。国際線の場合、ほぼ間違いなく機内食が出て、いわゆるFish? Or Beef?の世界なわけですが、そこでFish? Or 特別機内食?と聞かれることはありません。乗客の事情に応じて特別に用意される食事なので、普通は積み込まれていないわけです。ですから必要とする場合は事前に申請が必要で、これはエコノミークラスでも追加料金なしで(航空会社の予約確認画面から)注文することができます。

 

 例えば僕は学生時代、海外旅行の際に(安い割にサービスも良く、かつ路線も多く便利なので)よく中国国際航空を利用するのですが、中国以外が目的地の場合、ルートとしては東京〜中国(北京・上海など)〜目的地、ということになります。その際、例えばヨーロッパに行くとなると、東京〜中国で1回、中国から目的地(10時間前後のフライト)で2回、合計3回機内食のサービスがあることが多いです。となると往復6回食事することとなり、乗り慣れているエアラインの機内食は、多少出発地によりバリエーションがあるとはいえ、大体想像がつきます。エアチャイナだと朝はお粥とオムレツの二択が多い、とか、…

 そこで、2019年春に卒業旅行でヨーロッパに行ったわけなのですが、せっかくの機会なのでいろんなものを試してみよう、ということで今回のヨーロッパ旅行では以下のものを事前予約しました。

1. 東京〜上海:コーシャミール(ユダヤ教の食事)

2. 上海〜バルセロナヒンドゥー教ベジタリアン

3. ローマ〜北京:普通食

4. 北京〜東京:ヒンドゥー教食(ノンベジ)

並べてみるとやたらと国際色豊かですね、一体何者なんだという感じです(笑)これでも追加料金があるわけではなく、航空券代は3月下旬で8万円弱でした!なんともお得です。ヒンドゥー教食の場合、ベジタリアンとノンベジの2種類がある、ということも知りました(これは他の航空会社のサイトを見てもそんな感じでした)。

 特別な理由もないのにCAさんの手を煩わせて特別食を持って来させるのはどうなんだ、という意見があるのも理解しており、気分を害される方がおられたら恐縮です。ただ、個人的には、誰か事情がある人の特別機内食を奪っているわけではなく、事前にわざわざ自分のために注文しているのですから特段問題ないと思っております(乗客のうち先着3名が特別機内食を選べる、というのであれば当然選びません)。また、ポリシーとして、たとえ口に合わなくても完食するので、たまの旅行の楽しみとして様々な文化に触れてみたい、という理由でお許しいただきたいものです(特に事情がないと特別食を注文してはいけない、というものでもありませんし、旅行の際にその国の郷土料理を食べることと本質的には同じ、と思っているので)。

 

 さて、上海行きのフライトです。搭乗するとすぐ(離陸前です)CAさんが以下の写真の箱を持ってきて、開けていいか?と聞かれました。どういうことだ?と思いながら、(開けないと食べられないですし、なにぶん初めてなのでCAにお任せしようと思って)良いと答えたんですが、実はこれ、ちゃんと理由がありました。

 コーシャミールとは、ユダヤ教の戒律に則った食事で、定められた人以外は食事前(調理過程)で触ってはいけない、という厳しいもの。本当に厳密に守るならば、CAさんは食事に触れず食べる人が自分で箱の封を開ける、ということなのでしょうね。後で調べて納得しましたが、わざわざ聞いていただき感謝です。

 開けていいか?と言われた僕の昼食は、その場で開けられることなくCAさんがギャレーに持っていってしまいました。離陸後に開けて、温めてくださるのでしょう。

f:id:primaspa:20191229143914j:plain

コーシャミールはこのように、箱に入っている状態で提供されます。

 離陸後安定飛行に入りまして、お待ちかねの時間は、他の乗客より少し早く訪れます。どのエアラインでも、特別機内食は普通の機内食を配る際に混乱を招かないために、先に配り終えてしまうんですよね。コーシャミールは、このように箱に入って届きます(箱の封は一度開けて温めてもらったようです)。

箱を開けてもう一度びっくり、全て密閉されています。これだけだと何が入っているかわかりません。非常用の保存食を思い出しました。ちなみにメニューは、箱の封をしているシールに書いてありました。

f:id:primaspa:20191229144042j:plain

箱を開けたところ。

 

f:id:primaspa:20191229144155j:plain

成分表。

戒律に則っていないものは入っていない、ということを明らかにするために、成分表も載っています。幸い僕にはアレルギーも好き嫌いもないのですが、食べられないものがある、というのはかなり大変なことだなぁという感想。ユダヤ教は特に複雑だった記憶があります。

(賞味期限が1年以上先なのですが、本当でしょうか。。。)

さて、肝心の中身ですが、メインは魚。ブラウンのソースがかかっています(味は忘れました)。後はプレッツェルにミックスベジタブル的なものと、りんごのコンポート、チョコプリン。味は、まあ普通に食べられましたよ。付け合わせの野菜と上の野菜、種類が同じに見えますが、上はマヨネーズで味付けされていたような。全体的に薄めの味でした(チョコプリンも味が薄かった記憶)。とはいえわざわざ自ら体験しているわけですから完食します。薄味ですし油は少ないし、しっかり火が入っている保存食なので野菜が少しくたびれていますが、これはこれでヘルシーということで良いかと。

f:id:primaspa:20191229144119j:plain

さて、上海に無事到着し、空港で時間があったのでラーメンを食べました(ヘルシーとは…)炭水化物がプレッツェルとビスケットしかなかったので、少々空腹だったわけです。ちなみに、中国には何百種類も麺料理があるわけですが、ラーメン(拉面)というのは基本日本料理と思った方が良いです。中国ローカル麺料理とは味も値段も違い、どっちが好きかは人それぞれです。

 さて、続いてのフライトは、上海〜バルセロナ。偏西風に逆らって飛ぶ、12時間くらいの長いフライトだった気がします。機材はA330。学生なのでもちろんエコノミー、眠れるでしょうか。。

 注文していた機内食ベジタリアンヒンドゥー教食。これはかなりの高確率でカレーが出てきます。1回目は夕食ですが、ナスや豆が入っていますね。カレーは普通に美味しいです。付け合わせがフルーツだけなので少々寂しいですが、肉を食べられないので、そういうものです。まあ乗る前にラーメン食べたので、空腹でたまらんということもないでしょう。

f:id:primaspa:20191229144305j:plain

一緒にビールか何か飲んだ記憶があります(ベジタリアンですが、ビールは飲んでも良いのかな。。)

こちらは深夜便で、食事が終わったら時間的には就寝、といきたいところですが、しばらく映画などを観ます。長距離なんで、別に椅子でずっと眠ることもできないだろうという諦めもあり、しばらく時間をつぶす(意外と最新映画もあって良かったです)。

 記憶では、思ったよりよく眠れました(4時間くらいは寝たのではないでしょうか)。窮屈な姿勢で何とか寝て、浅い眠りから起きて、実は全然時間が経っていなかった時って、結構ショックを受けますよね。。特に眠れないと苦痛の時間なのですが、今回はそんなこともなかったように思います。

 そうこうしていると、朝食の時間になりました。特別機内食を頼んでいるので、二食目もヒンドゥー・ベジです(当然ですが、同じフライトで1食目と2食目が違う食事というのはNGです)。こちら、予想通りの朝カレー!本フライト2度目のお出まし。ちょっと違う種類の豆が入っています。平たいパンには見覚えあり。夜のカレーよりも味が薄かった気がします(朝食用??)。フルーツと、ビスケットと、オレンジジュースがカップに入っています。あと、中国発だからなのか、なぜかザーサイ。何につけて食べるのか、、と思っていましたが、思ったよりカレーが薄かったので混ぜるなどして。

f:id:primaspa:20191229144336j:plain

結論、ヒンドゥー教ベジタリアン食は、カレーが好きなら結構楽しめます。それも、ベジタブルオンリーなので日本では珍しい種類。比較的おすすめです。

  楽しかったヨーロッパ旅行も最終盤(行った国については別のページで書きます)。いよいよお楽しみの(?)帰りのフライトです。先ほどお示しした行程では、復路は普通の機内食(夜朝)+ヒンドゥー教(ノンベジ)です。ローマ〜北京で普通の機内食を選んだのは、食べ比べとして普通のも食べようと思っていたということと、あとはイタリア発なのでどんなのが出るのかという期待込みです。結果、当たり前ですが夕食朝食ともに普通の食事が出てきました。しかしさすがイタリア、夕食のオリーブとか朝食のクロワッサン・タルトとか細かいところがお洒落ですね。パスタのボソボソ感は否めませんが、特に朝食は、写真映り以上には美味しかったですよ。

f:id:primaspa:20210816185135j:plain

パスタ。もちろん肉入ってます。

f:id:primaspa:20210816185211j:plain

朝食のお粥。


無事北京に到着。機材が新しい(B787)とよく眠れますね。

そして、ついに今回最後のフライト、北京〜成田のフライトです。今まで相当数このフライトに乗ってきた気がしますが、そこで出てくる普通食は、おなじみの中華風ライスとか和食もどきの魚餡かけみたいな料理でした。そこで今回、ヒンドゥー教のノンベジの食事を選んだわけですが、そのお味やいかに。

f:id:primaspa:20191229144407j:plain

 イモのカレー?的なものでした。メインは魚。左上にはまた見たことのない豆。ベジタリアンの方がしっかりしたカレー感あって個人的には好きでしたが、こういう感じなんですね。ノンベジとはいえ、肉は出ないということなんでしょうか。今回が初めての経験なのでそこまでは分からず。

 

というわけで、今回様々な食事を楽しませていただいたわけですが、宗教上の理由以外にも、健康上の理由等に配慮した食事も事前選択できます。皆さんもぜひ機会があれば試してみてはいかがでしょうか。何より、これが本来の目的ですが、一般の機内食が食べられない方には、各エアラインのサービスとして特別機内食が存在するということを知っていただきたいなと思います。

 

ここからは番外編なのですが、次の写真は、バンコクから上海に移動した時のヒンドゥーベジタリアン食です。自称インド料理好きなので、結構いろんなところで僕はカレーをオーダーしてますね。。でも、見た目によらずこのカレーすごく美味しかったんです。特に左上真ん中の謎のカレー(?)、豆腐なのか豆なのか、衝撃的に美味しかったのを今(2021年8月)でも覚えてます。これが何なのか、ご存じの方いらっしゃれば教えていただきたいです…

f:id:primaspa:20191229144650j:plain

 

こちらは、キャセイパシフィック航空に乗った時のヒンドゥーベジタリアンミール。こちらもメインはカレーです。オクラのカレーと、左はイモとカリフラワー?奥に蕎麦みたいなのが見えますね。なかなかミスマッチですが、いずれも味は美味しかった記憶があります。

f:id:primaspa:20191229144717j:plain

 

カレーと言っても奥深いんですね。こうやって書いていると、また自由に旅行に行ける日があらためて恋しくなってきました。長くなりましたが、ご覧いただきありがとうございます。