オーストラリア留学経験(Young Leaders Programme in University of Sydney "Inventing the Future" 参加体験記)

 今回は、留学について書こうと思います。2021年現在、コロナの影響で留学をめぐる状況はこれまでとかなり異なる様相を見せており、中にはオンライン留学をされている方や、運良く現地に渡航でき方でも現地で多少の行動制約がかかっているのではないか、と思われます。僕も数年後に留学することを志しており、それまでには何とかコロナが収まる(終息とは行かなくても、ワクチン接種済みの人が相当数となり、目的を持った渡航や国外旅行も再開されている)ことを祈っています。

さて、今回のメイントピックは、僕がコロナ前にオーストラリアに留学したときのこと。2018年の1月に私が参加したプログラムは、シドニー大学が主催する"Young Leaders Programme"というものでした。非常に有意義かつ濃密なプログラムだったのでぜひ多くの人に参加してほしいと思って宣伝します。長くなりますが、関心を持っていただけると嬉しいです。

 

<プログラム紹介>

このプログラムは大きく二つの区分に分かれます。一つが環境をテーマとするEnvironment、そしてもう一つが私が参加したInventing the Future(ItF)です。

以下、自身が参加したItFについて詳しく書いていきます。

期間は3週間、今回は1月22日〜2月9日でした。

実はこのプログラムが開設されたのは2017年、私が参加したのはシドニー大学としても2回目とのことでした。初年度は中国の復旦大学の研究生(日本で言う大学院生)専用のコースだったようです。そして募集枠を広げた結果、今回は5つの大学から30人が参加しました。その大学がこちら。

復旦大学中国科学技術大学上海交通大学清華大学、A大学(私が所属する某国立大学)。

最初に申し上げると、私は今回参加した"唯一の"日本人でした…残りは全員中国の名だたる大学の学生。つまり私はこのプログラムに参加した最初の日本の大学生(応募した時はまだ知らず)。

Applicationを提出して無事acceptされた時に、メンバー表を見て非常に驚きました(笑)。この時に思ったことは以下の二つ。

1. 中国語が自由に喋れないことは必ずハンデになる、ヤバい。

2. 日本人がプログラムで一人、というコンテンツがあるなら必ず目立てる、ラッキー。

 

1に関しては結構深刻で、行く前の1ヶ月強はかなり必死で中国語の勉強(特に語彙とリスニング、スピーキング)をしました(とは言え、渡航時のレベルは初心者の域を出ない)。結果この不安が杞憂に終わったのか否かは以下を読んでいただければ。

2については、これまで少ないながら国際交流を行って来た中で培われたところがあって、「海外に行くなら喋らないと損。目立たず終わることが一番無駄。金も時間も」というのが個人的な行動倫理になっています。これは自身にとっては成長と言えるのかも。せっかくなら全てを自分の成長の機会に、とまで言うとそこまでできている自信がありませんが、せっかくなら友達を作りたいし、コミュニケーションとれば留学中もその後の生活にも何らかの役に立つだろう、というマインドです。

 

<プログラム内容>

大まかにいうと、3週間で「社会課題を見つける→解決策を議論→プロトタイプ作成→発表」

という流れ。

渡航前に事前課題があり、まずMedical(医療)またはTransport(交通)の題材を選ぶ。僕はMedicalを選択しました。そして、自分の国において現在から近未来(10〜15年後とか)に生じる問題を洗い出しておく。これに関してまず簡単なレポートを提出。

そしてシドニーでは、講義&グループディスカッションを中心に、解決策を練り上げていき、最後実際にプロトタイプを作って教授陣に発表します。

講義は、Martin Tomitsch先生(デザイン経営を専攻?)方から、プロジェクトを実行する上で必要なことを包括的に学びます。後で知りましたが、経営学でプロジェクトマネジメントを学ぶような感じです。

システム・アプローチやデザイン思考など、講義は多岐に及びます。今回のプロジェクトでは、実際に商品として売り出すことを想定するため、ビジネス的な視点についてもここでコメとをもらいます。

グループディスカッションは5〜6名の班(学校はバラバラ)で議論を行い、シドニー大学のメンターの人たちにも意見をもらいます(Mentor Session)。これに関しては本当に面倒見が良かったです。様々な専攻のTAが多くの時間を割いてくれるし、丁寧に疑問を解決してくれるというのは、素人留学生的にはすごくありがたかったです。もちろん時にはコメントに対して疑問を覚えることもあるわけですが、年齢が近い(かつ知見のある)人に相談できるというのは良いですね。

もう一つ面白かったのが、キャンパスのDesign Labを訪れることができたことです。ここでアイデアを実際に具現化するのですが、3Dプリンタを使ったり、紙や発泡スチロールで工作したり。こういう過程は実社会で商品開発を行う際にも有用だろうし、何より机上のアイデアが形になるプロセスが楽しかったです。自分の大学でそんな経験がなかったので、今回のプログラムが非常に良い機会となりました。

中国の大学生の中で一人だけ日本人、という言葉の壁もある中、疲れることがなかったと言ったら嘘ですが、非常に濃密な3週間を過ごすことができました。

※観光については、以下リンクや、また別の機会にも書きます

 

primaspa.hatenablog.com

  

primaspa.hatenablog.com

 

ここで一つ思い出深いことを。最後に、プログラムの責任者からWrap Upとして話がありました。このプログラムの意義、企画の意図、諸々。そこで思いがけないことが。

「…二年目となる今年は幅広い専攻、大学から学生が集まってくれました。特に、一人で東京から来てくれた〇〇、申込を見た時には大変じゃないかと思ったけど、積極的に環境にとけ込んで活動を楽しんでくれたようで本当に嬉しい。チームメンバーと楽しそうにコミュニケーション取ってるのを見て安心した。You did great work」と言っていただいた。そしてさらに驚いたことに、クラスメートの誰からともなく自然に広がっていった拍手。本当に泣きそうになるくらい嬉しかったです。

言葉の問題は少なからずありました。グループワークでは、(僕がいなければ母国語で進められたので)逆にメンバーに不便を強いたかもしれません。でも拍手をもらった瞬間、自分が楽しませてもらったのと同様に彼らも交流を楽しんでくれたのだろうと、少なくとも自分の参加は間違っていなかった、そう感じると込み上げるものがありました。

まあ実際には、グループワーク中もアクティビティ中も、なんだかんだ中国語が飛び交っており、僕はたまに謎の相槌を打ったり疎外感を感じていたり、ということもあったわけですが笑

とはいえ、気にかけてくれたチームメイトも多く、少しは中国語勉強していてよかったなぁという感じです。

 

長くなりましたが、大変だったこと、楽しかったことをまとめると、

<大変だったこと>

・会話;僕との雑談は英語(時折簡単な中国語)、でも彼ら同士はもちろん普段は中国語。4割くらい聞き取れていたものの、口を挟むのが難しい。特に聞き取れない&盛り上がっている時にはやはり少し心が折れる。グループワーク中も、議論が紛糾すると彼らは中国語で議論を行い(必死で聴いて挟めるところは口を挟むが)時折英語で要旨を伝えてもらうわけですが、辛くないと言えば嘘になります。

 わからない奴いるなら英語使えよ、と思う反面、自分は何も貢献できていないんじゃないか、という不甲斐なさもありました。(少し聞き取れるのがまたもどかしい)グループの人数が増えるほど僕以外との会話が増える、すなわち中国語率が高まるわけで、実際もどかしさもありました。

 ただ、これは彼らを責めるものでは全くなく(実際、帰国後もメンバーとは仲良しです)、自分たちも留学生とか、逆の立場で同じことをやってしまっているので、対外コミュニケーションの難しさですね。。

 

<楽しかったこと>

・交流;とにかくコミュニケーションを取らないことには始まらないので、否が応でも積極的になりました。中国語上達させたい人や喋りたい人にもいいんじゃないでしょうか、オーストラリアなので必然的に英語も使いまくります(笑)

 驚いたのは思ったより日本に関心のある学生が多かったこと。日本語専攻ではないのはもちろん、プログラムに日本人が参加していることも知らなかった中で集まったメンバーです。でもアニメに僕より詳しい人がいたり、日本語勉強している子がいたり。ナルトのキャラクターについて延々と語ってくる人に、東大に留学していた人。日本人女子は可愛いってひたすら言ってくるヤツもいた笑

 これは2つ年下の男子学生に言われた話で、「日本人は中国をどう思っているのか」日中の学生が議論するときの話題で思い浮かぶベタな話題だけど、実際に面と向かって言われたのは初めてかもしれないです。このブログは完全に僕の個人的な感想なのですが、政治と文化は別、というスタンスで答えたところ、彼は歴史観は?戦争の歴史を学校でどう習う?ともう少し踏み込んできました。面白いですね。

 中国人が日本をどう思っているか、という点について逆質問をすると、若者はアニメとか好きだしそんなに複雑な感情は持っていない、とのこと。実際彼の筆箱はナルトでした笑

 雑談もですが、なんと彼らとゲームをしました(笑)。一つは人狼的なもの、そしてもう一つは、僕が知らなかった以下のゲームです。

①参加者は持ち点を与えられ、そして順番に自分がしたある経験を語ります(ヨーロッパに行ったことがある、猫を飼っている、など)。

②一人でも経験者がいたら未経験者の持ち点が1ずつ減り、自分の他に誰も経験したことがなかったら自分の持ち点が1減る。持ち点が0になった人が負け、罰ゲームとして何でも質問に答える。

ちょっと違いますけど、笑っていいともの100分の1アンケートみたいですね。これは互いのことを知るのに良い機会となりました。互いに「英語を使う」という不自由さがあったからこそ感じられる面白さもあったわけです。

 

 以上長々と書いてきましたが、切に願うのは、ぜひ日本からより多くの学生に参加してほしいということです。確かに、僕が一人だったからこそできたこと、良かったこともありました。しかし一勢力として日本の大学生がいる、これはシドニー大学における日本のプレゼンスを示すという意味でも、参加する日本人学生の負担を和らげる意味でも(笑)、そして何より交流の幅を広げるという意味で重要なことだと思っています。

 おこがましい話ですが、僕の交流、発信する情報には僕の色が出ます。正しいか否かという問題もあるし、伝えきれない範囲、カバーできない分野もあります。数が多ければ話題の次元や深みも増し、より日本のことを知ってもらえると思っています。

 逆も然りで、交流して得た情報の解釈の仕方、感じ方も人により違うはずなので、異文化を脳内に吸収して自身の日常で活用する「交流」という点では、一人よりも二人、二人よりも三人の方が望ましいのだと考えます。受信器も発信器も、たくさんあった方が通信量増えますよね。

 少なくとも、シドニーでこの素晴らしいプログラムに参加して得られるものがあるならば、この機会を途絶えさせる(中国の大学生だけのプログラムにしてしまう)というのは非常に惜しいと感じています。一人でも多くの方が興味を持ち、参加していただけることを、心から願っています。何かご質問ある方はいつでもお待ちしています。

 

最後までお読みいただいた方は、乱文でしたがありがとうございました。

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シドニー大学。寮も雰囲気があって素敵です

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シドニーの夕陽。